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「2018年問題」と会社の対応

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有期雇用社員や派遣社員の「2018年問題」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。

これは、労働契約法改正や労働者派遣法改正によって、有雇用社員(契約社員)や派遣社員といったいわゆる非正規労働者の雇用期間・派遣期間が制限されるようになった影響が2018年に現れることを指します。

このうち、特に有期雇用契約の無期雇用契約への転換にについて、ここのところ多くの企業の対応が報道されています。

有期雇用契約の無期雇用契約の転換をごく簡単にまとめると、「有期労働契約の通算期間が5年を超え、有期雇用社員が無期雇用契約に転換することを申し込んだ場合には、給与などはこれまでと同じ条件のまま、期間の定めがない契約(無期労働契約)に変わる」というものです。

たとえば、1年契約の有期雇用契約を5回更新して、通算期間が5年を超え、労働者が希望すれば、そこからは有期雇用ではなく無期雇用になります。

 

有期雇用であれば、(一定の制限はあるものの)原則として期間の満了時に契約を更新せずに終了させることができますので、雇用主である企業としては雇用調整のために使い勝手がよいものとして活用されています。

これが無期雇用となると、企業の一方的な都合で契約を終わらせるためには解雇するしかありませんが、解雇については厳しい規制が課せられていますので、企業が自由に雇用契約を終わらせることができなくなります。

 

このように、雇用調整という企業の都合のみを見ると、有期雇用社員が無期雇用社員となってしまうことは、企業にとってはマイナスの影響が大きいと考えられています。だからこそ、2018年“問題”と言われているのでしょう。

実際に、企業の中には、無期転換を避けることが目的と思われる規程の変更を行っているところがあるようです。これまで有期雇用契約の通算期間の上限がなかったり、上限が5年を超える期間であったりしたものが上限5年以内と変更された事例も少なくありません。

また、有期雇用契約が終了した後、新たな有期雇用契約を結ぶまでの空白期間を6ヶ月以上設けることに変更した企業があるとも報道されています。これは、終了した有期雇用契約から新たな有期雇用契約締結まで6ヶ月以上の空白期間を設ければ、以前の有期雇用契約と通算されないという制度(クーリングといいます。)を利用して、無期転換を避けることが目的と考えられます。

 

一方で、ここ数年、大企業を中心として、これまでパートやアルバイトを含む有期雇用であった社員を全て無期雇用の正社員とするという動きも増えてきました。例えば、ユニクロ、高島屋、J.フロントリテイリング(松坂屋や大丸など)、イケア、スターバックスなどが非正規雇用だった社員を正社員化したことを発表しています。

正社員化を進める大きな目的の一つは、人手不足を解消するために労働条件を向上させようというものです。そのため、サービス業や小売りといった人手不足が深刻な業界を中心に正社員化の動きが進んでいます。

 

このように、業界ごと、会社ごとに「2018年問題」への対応はいわば正反対になっています。

2018年問題への対応を検討する際には、無期転換ルールを単純に会社にとっての“問題”であるととらえて無期転換を避ける方法を考えるのではなく、会社にとって有期雇用社員がどのような存在であるのかをもう一度よく考えることがスタートです。

そして、本当に有期雇用契約を締結することに意味があるのか、会社で働く社員が力を発揮するためにはどのような労働条件がベストであるのかについてよく検討し、正社員化を進めていくのか、有期雇用社員を活用していくのか、またはこれらを融合した方法を取るのかという2018年問題に対する会社の対応を決定していくことが必要なのではないでしょうか。

少なくとも、このような検討をしないまま、とにかく有期雇用契約を増やそうとしたり、無期転換ルールが適用されないような仕組みを作ったりすることは、会社にとって必要な人材の確保が難しくなるなど、かえって自分の首を絞めることにもつながりかねませんので、避けなければなりません。

この「2018年問題」は、会社における雇用形態の整理とそれぞれの意義について検討することで、会社の目指すべきものを改めて考え直す絶好の機会となります。

(大城章顕)

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