廣島です、しっかし寒いですね! さて前回は、QUEENの話から転じて…ファシリテーションの最初のステップ、「場づくり」について書きました。場づくりは、「メンバ全員が自分事として参加している」チームを作るためにとても重要なことです。
誰かが話をしている途中で別の声が大きい人が割り込んだり、特定の人しか発言しなかったりする場は、まるでお説教会みたいでお寒い雰囲気…このような白けた場では、メンバの参加度はとても下がってしまい、チームの目標達成に「自分事」として取り組めなくなります。全員参加型の熱量タップリなチームを作るためにファシリテータがやることは…まずは何を差し置いても「場づくり」です。
メンバ一人ひとりが強いパートナーシップを持ち、お互いを尊重し感謝の気持ちを持ってフォローし合いながら、自分事として目標を達成していく「参加度の高い」チームを作るためには、まず、メンバの意見(思い)をとことん引き出しぶつけ合える安全な場を作る必要があります。なぜなら、高い成果を生み出すためにはチーム内で議論の「発散」と「収束」が十分に行われる必要があるのですが、これは、自由に意見を述べ合える場が無ければ成立しません。意見を無視されたり、攻撃・批判をされる危険な場では、誰も意見を言おうとしないでしょう。
まずは、『前向きに自由に意見を言い合える場』『発言者が守られる場』を作りましょう。これは、メンバの『参加度』を高めるために大切なのです。
『参加度』に加えて、場づくりにはもう一つの大切なポイントがあります。それは『共有度』です。チームがより効果的に成果を出すために…ファシリテータは常に、メンバの参加度と共有度の両方を高めるための場づくりを心掛ける必要があります。
『共有度』が高いチームでは、メンバが以下の2つの状態になっています。
1)全員が、ゴールをブレなく共有している
2)全員が、プロセスをブレなく共有している
1)ゴールの共有
チームが成果を出すために、そのチームのゴールを明確に設定し共有します。
チームのゴールが曖昧であったり、一人ひとりが思い描いているゴールの間にズレがあると、チームが何かの困難に直面した時にメンバ同士がかみ合わなくなってしまいます。
「そもそも、俺たちは何のために集まったのだっけ?」
「俺はこんなことをするために参加しているのではない!」
何となくスタートを切り…そして何か真剣に議論する必要がある場面が訪れた時に、チームのゴールに対して「そもそも論」や「ちゃぶ台返し」がでてくるのはとても恐ろしいことです。
さて、あなたが参加しているチームでは…
メンバの誰に聞いても、「俺たちは、いつまでに、こんなことをやるんだ」と、同じ最終ゴールが明快に語られますか?その最終ゴールを目指す理由が同じように語られますか?
最終ゴールだけでなく、もっと近くの小さなゴールもしかりです…
例えば今日のミーティングのゴールは共有されていますか?今週はどこまで出来ている予定ですか?年末には何が達成されている予定ですか?
2)プロセス(進め方)の共有
ゴールが共有されたら、そのゴールに至るまでの進め方についても全員で納得するまで議論し共有します。
ゴールに到達した時に、メンバ全員が本当に100%満足できるすばらしい結論や結果が出るとは限りません。「多数派の意見や妥協の産物を受入れざるを得ないこともある…」、これが現実です。
それでもなぜ、人は、不満足な結論や結果に対しても納得するのでしょうか?それは…納得できるプロセスで到達した結論や結果だからです。
「これは、みんなに公平に意見を聞いて、しっかりした道筋で理論的に考えた結果だ…」
充分納得できるプロセスで出た結論や結果であれば、誰もが受け入れるしかありません。
逆に言うと、十分にプロセスに納得ができてないと、仮にチームとして素晴らしい結論や結果が出せたとしても、それに対して心情的に納得できないメンバが出てくる可能性もあります。
怖いのは、メンバが進め方に対して腹落ちせず、ヘソを曲げることです
「え?そんなことやるの? 聞いていない、寝耳に水だ」
「そもそも、そんなやり方には納得していなかったんだよ」
さて、あなたが参加しているチームでは…
みんなが進め方に腹落ちしていますか?誰もが進め方を同じように説明できますか?たまにはみんなで進め方の見直しをしていますか?
チームは、色々な経験や信念・価値観を持った生身の人間が集まる場です。ファシリテータは、まず、チーム内に『情緒的な納得感』を醸成しないといけません。そのためには『参加度』と『共有度』の両方を高める場づくりが必要になるのです。
ITシステム導入コンサルの業界では、いきなり専門用語やIT用語を並び立て、ロジカルシンキングなどのノウハウや小手先のスキルを駆使して『論理的な納得感』を高めようとする人もいます。ですが、お客様企業に変革を起こそうとするファシリテーションの世界では…まずやらなければいけないことは…チーム内に『情緒的な納得感』を醸成することです。
ちなみに…TOCで有名なゴールドラット博士もこういっています。
「まずは感情、そして直観→論理…のサイクルを回してブレークスルーを探し出す」
「TOCのコアは『調和』である」
チームを白けた状態にしない…理想を絵に描いた餅にしないで本当にブレークスルーを引き起こす熱量のあるチームを作る…そのためには「感情・情緒」や「調和」を大切にする…という考え方は、実は、ファシリテーションだけではないのです。
小手先のテクニックやバズワードに惑わされる、数字やKPIにコントロールされる…こんな時代だからこそ、人間の情緒や感情を軽んじてはいけないと思うのです。
まずはゴールとプロセスをしっかり共有して、情緒的に「調和」のとれたチームを作る…これは本来、日本人が得意とする能力ではないでしょうか?
QUEENだって、4人が同じゴールと同じプロセスを共有し、音楽づくりに対する考え方や姿勢を激しくも安心してぶつけ合える、決して白けておらず、とても調和が取れたバンドだったのではないでしょうか?
こんな視点で、来週もう一度、ボヘミアンラプソディを見に行こうと画策しています。