テクノミュージックのユニットのメンバーでもあり、
最近は大河ドラマをはじめ俳優としても大活躍だったあの人が
コカインを使用して逮捕されました。
こういったニュースを見るたびに思うことが、
私たちは他人の活躍ぶりや暮らしぶりなどについて、
大抵の場合「借方」しか見ていないのだ…ということです。
企業の貸借対照表の借方には、資産が並んでいます。
難しい言葉で言えば「資本の運用形態」。
どれだけ現金を持ち、商品を仕入れ/作って保有しているのか。
そういった企業活動をするためにどのような固定資産を持っているのか。
借方に現れるのは、外部の人間から見て取りやすい
いわば企業の「オモテ面」だと私は思っています。
では「ウラ面」とは何かというと、
貸借対照表の貸方、「資本の調達源泉」といわれる部分です。
ビジネスを行うためのお金をどこから引っ張ってきているのか。
オモテ面が同じような姿かたちをしていても、
ウラ面が自己資本や筋の良い借り入れでできているか、
はたまた性質の悪い借金でできているかで
その企業の本質は大きく異なってくるわけです。
企業のみならず、これは個人の場合でも似たことが言えます。
数年前、ある会合で知らぬ間に婚活の話題になり、その時に
「かつては、結婚相手の見極めにはゴルフが一番だった」
とおっしゃる女性がいました。
なぜかというと、合コンだけでは名刺の肩書(=オモテ面)しか分からないが、ゴルフに行くことによってウラ面がわかる、すなわち
- 迎えに来る車で経済状態がわかり
- その車の清潔度で生活態度がわかり
- プレースタイルで不測の事態への向き合い方がわかり
- 運転の態度やテーブルマナー、他のプレイヤーへの気配りまでもがわかる
から、ということのようです。
「かつては、」とある通り、これはあくまでも一昔前の話です。
最近はゴルフ人口自体が減少したことと、
シェアリングビジネスの普及に伴い車を持たない生き方が当たり前に
なってきたため、この法則は当てはまらなくなったろうと思います。
いずれにせよ、ゴルフで名刺の肩書以上の部分を
見極めようという話は含蓄があるなぁ、と思わされました
(もっとも、先ほどの貸方の話を続ければ、車を見たからと
いってローン残高が分からない以上経済状態は正しく判断
できないわけですが…)。
さて、借方と貸方、という会計の持つ二面性は、
人間の経済状態だけでなく、精神的な環境にも
示唆を与えていると思います。
冒頭に紹介したとあるタレントさんは、
一見、誰から見ても名声を得ている人でした。
しかし、その裏側でどんな苦悩を抱えているのか。
それは本人にしかわからないことです。
そして、そのオモテ面を維持するために、
ウラ側で社会のルールから外れたことをしてしまった…
このことを責めることは簡単ですが、
むしろ私たちが必要以上に自分を飾り立てなければ
いけない世の中に生きていることに、私としては
意識を向けておきたいと思います。
最近の経営者の中には、
オモテ面をあえて飾らない人も増えてきました。
きっとそれは、オモテ面を飾り立てることにより増えてしまう、
ウラ面の負担の重さを知っているからなのかもしれません。
イメージを売る芸能界にあって「飾らない」を地で行くのは
大変なことなのかもしれませんが、クスリに頼ってまで
自分を保たなければならない世界に、明るい将来は待っていない…
それだけは確かです。
(眞山徳人)