グーグル先生で遊んでいるうちに、かれこれ35年位前でしょうか…高校~大学の頃にマイコンで遊んだELIZAというプログラムを思い出しました。このELIZAは、セラピストの問診をシミュレーションするDOCTORという会話機能を持っており、音声会話はできませんがキーボードを使って以下のような会話が出来たのです。
以下、<人間:>で始まる行は人間が入力した言葉で、<ELIZA:>で始まる行は、それに対するELIZAの返答です。
人間 :「とても頭が痛いんです」
ELIZA:「それは、お薬を出してくれるお医者さんに相談したほうがいいですよ。私は精神科医ですから」
人間 :「わかった、そうするよ」
ELIZA:「それについて、詳しくお話ししてください」
人間 :「あなたは何を言っているのですか、詳しく話せませんよ。さようなら」
ELIZA:「なんでそんな事を言うのですか?」
人間 :「あなたがおかしな事を言っているだけだからです」
ELIZA:「なぜあなたは、私がおかしな事を言っているだけだと思うのですか?」…
(出典:ウィキペディア、和訳は廣島)
当時はインターネットなど無い時代で、プログラムは手打ちで入力するしかありません…私は何時間も掛けて、紙面に何ページにもわたって記載されたELIZAのプログラムを打ち込み、一文字ずつ紙面と画面を見比べて入力ミスを探し直していきました。そしてとうとう無事にELIZAをRUN(実行)できた時には鳥肌が立ちました。35年位前のマイコン上で動く程度の小さなプログラムですが、まるで本当に人間とお話しをしているような感覚を覚えるほどの双方向のコミュニケーションができたからです。
なぜコンピュータが、人間が打ち込んだ文章を理解できるのか…私の問いかけに対して、プログラムのどのロジックがどのように動作しているのか…どうやって、このような人間らしい文章で作り上げてくるのか…
私は色んな文章を打ち込んではELIZAの応答を読み、プログラムリストを見て、どのような処理がコンピュータの中で実行されているのかを夢中で追いかけて、ELIZAの作者のプログラミングスキルを盗みとろうと必至に研究しました。
でも同時に、ELIZAとの会話はとても楽しい体験であり、人工知能の実現性を確信する体験でもありました。
今の私がグーグル先生にやっているように、高校の頃の私も「あなたは嘘つきだ」などとELIZAをけなして遊んだりもしました。前出のウィキペディアの例でも人間がELIZAをけなしていますね(笑)…つまりELIZAは、それほどに人間味を持ったプログラムだったのでした。
35年前の非力なコンピュータ技術でも、うっかり感情移入してしまうレベルの人工知能と呼べるようなプログラムがあったのです。
AIだAIだ…と世間が声高に騒いでいますが、実はAIのアイデアは古くからあったのです。例えば、前述のELIZAのプログラムがアメリカで初めて雑誌に掲載されて多くの人が人工知能を体験したのは1977年、その後の1980年代にはエキスパートシステムを軸とした大きなAIブームが起こりました。
今日のAIに目を移してみると…「AIが一番応用されているのは、炊飯器などの家電だ」と、日経か何かの記事で読んだことがあります。人工知能が米や水の量などを判断して、ベストな炊き方でごはん美味しくしてくれるそうなのです。しかし、炊けたごはんの味の良し悪しを判断してAIを改良していったのは人間なのです。
すなわち、ELIZAもエキスパートシステムも、そして今日の家電に搭載されたAIも…多くは【人間がルールや知恵を教え込んで作ったもの】なのです。
今度は私が生まれた1960年代に目を移してみると… 1968年、アーサー・クラークとスタンリー・キューブリックは、人間を超えた知性を持ったマシンが2001年には登場しているだろうと想像しました。それが「2001年宇宙の旅」に出てくるHAL9000です。
自らの力で状況を見て判断~学習し、自らの価値観や道徳観をもって色々なことを決断し行動に移していくHAL9000からは…夢の人工知能を通り越した「えも言えぬ恐ろしさ」すら感じました。
そしてその2001年から20年近く経った今日、AIはHAL9000のレベル…すなわち「自分で学習する能力を持つAI」のレベルに到達しはじめているそうで、昨今の第3次AIブームの背景には、この『機械学習技術』が現実味を帯びてきたことがあるようです。
とても楽しみでもあり少し怖くもある新しいAIの技術が、着々と芽生え始めている…こんな状況の今日、IT業界ではどんな事が起きているのでしょうか? また次回、続きを書ければと思います。