はっきり言ってほとんどの会社は会計数値を使う事が下手です。
上手に使うためのやり方に関する情報が非常に少ないので、真面目な経営者や経理部、経営企画の方ほど悩まれているのを何度も見てきました。
試行錯誤するのも大事ですが、一歩進んで二歩下がっていては勿体ないので、何度かに分けて考える際のポイントをお伝えしようと思います。
1回目は最近色んなところでお話している「利益」について書きます。
多くの会社で売上高や営業利益などの利益を全社の目標としていると思います。成長を重視するステージの場合は売上高を最も重要な指標とするでしょうが、成長期を抜けて安定した経営を目指す多くの会社では利益を重要な指標としていることでしょう。
さてここで質問です。「営業利益」とは何でしょうか?
簡単すぎてつまらないと思わず最後までお付き合いください。実は利益を追いかける事が会計の間違った使い方の一つなのです。
計算方法的には以下のように表されます。
営業利益=売上高‐原価‐経費
車のディーラーとすれば、売上高は車の販売代金、原価はメーカーからの購入代金、経費は店舗の賃料、人件費、水道光熱費や販促グッズなどの費用となります。
なので、営業利益は「事業の稼ぐ力」を表すと一般的に言われます。
もちろんこれは間違っていません。そのため営業利益の額や売上高営業利益率を重視する経営が今では当たり前です(最近話題のゴーン氏が日本で広めたとも言えます)。
批判を恐れず言えば、これは前時代的かつ会計の使い方が下手な経営の代表格です。
営業利益に戻します。少し質問を変えます。営業利益は誰のものでしょうか?
回答がパッと浮かんだ方は、以下読む必要ありません。ただ私の経験上答えられた人は今のところいません。
正解は、株主や銀行など資金提供者のものです。
営業利益が株主への配当の原資ですし、借入の原本返済や利息の支払いの原資でもあります。
(若干簡略化しているのはご容赦下さい)
逆の言い方をすると、営業利益は社員のものではありません。
これは多くの方が感覚的には理解して頂けると思います。利益を求める経営者が時としてリストラをしたり、必要な人員を確保することにネガティブであったり、給与水準を管理するために評価制度を変更するといったことをやる事を知っているからです。
にもかかわらず「営業利益を○○円稼ごう!」という目標を社内で掲げている事が問題であり、私が使い方が下手だという理由です。
社員の多くは作業者であり、コストであるという思想で経営をするならば、若しくは会社は株主のためにあり株主への還元こそが最大の目的であると考えるならば、営業利益を目標とするのは合理的です。そういった哲学で経営する会社は引き続きそうして下さい。
そうではなく、社員は会社の資産であり、ともに社会に価値を提供する仲間だという哲学なのであれば、営業利益を目標にしないことをお勧めします。
上記で説明したとおり、営業利益を追いかけることは社員の利害と一致しないためです。
次回は、利害の不一致を生まない会計の使い方についてご紹介したいと思います。
(夢想家 山口)