広島もすっかり寒くなってきまして、山間部では明け方の気温が0度近くまで冷え込むようになり、山道には塩が捲かれる季節になってきました。こうなるともうバイクはオフシーズンになりまして、山に出掛けてワインディングを流す楽しみは春までお預けになります。
じゃあ週末は何をして過ごそうか…と思っていたところ、小生の結婚披露宴に出席してくれた旧友より、フレディマーキュリーの半生を描いた映画『ボヘミアンラプソディ』を観るように勧められました。
小生の結婚披露宴で流したBGMは全てフレディの楽曲だったので、旧友はそれを思い出してこの映画を勧めてくれたのでしょう…ありがたいことです。
さっそく、カミさんと二人で数十年ぶりに映画館に足を運び見て来ました。すでに自分がチケット料金を割引きされる年齢になっていたことに妙な感動がありましたが、映画自体も、目頭が熱くなるほどの感動があり思わず歌詞を口ずさみ拍手をしてしまうような臨場感がある大変良い作品でした。(以下、ネタバレ注意でお願い致します)
パッとしないSMILEという名のバンドにフレディが参加し、QUEENという名のバンドになったのが1971年…そこからわずか3年後には英国ヒットチャートの上位に入るようになり…75年には全米チャートインし来日講演も果たしました。同じく75年の秋に『ボヘミアンラプソディ』がシングルカットされ、約2カ月間、全英チャート1位となりました。
SMILEという場末の白けたバンドから「こんなバンドに居ても希望は無い」という理由でボーカルが脱退し、その代わりにフレディがボーカルとして参加しQUEENとなったのですが…その後のQUEENは、あっという間に世界を代表する熱いロックバンドになったのです。
「こんなバンドに希望はない」とボーカルが抜けていってしまうような白けたバンドが、なぜ、世界を目指す熱いバンドになったのか、そして実際に、数年で世界を股にかけたツアーを行うようなビックバンドに成長していったのか…?
劇中、QUEENがメジャーデビューのチャンスをつかむ場面で…フレディはレコード会社の人間にこう言いました。
『俺たちは家族だ。居場所のない俺たちは、お互いにお互いのために曲を作っている…』
フレディのリーダーシップが強力だったことは当然でしょうが、一人ひとりが強いパートナーシップを持ちお互いにフォローし合おうとするバンドだったことが、一つの成功要因だったのではないかと考えます。
また、劇中では、互いの曲を激しく批判し…誰の曲をアルバムに入れるかで争うような場面も何度かありました。しかしこのような争いも…お互いに本音をぶつけ合っても大丈夫な関係なのだ…という安心感があってこそ起こるのだと感じました。
小生がお客様のお役立ちとしてやらせてもらっていることの一つに、『目標に向かって現状を変えていくチームを作り、現実に変革を起こしていくのをお手伝いする』という内容のものがあります。このチームビルディング~変革実現までの過程はいくつかのステップを経て進めていきます。また、小生はこの過程を進めて行くことをファシリテーションと呼んでいます。(世間一般では、司会をすることのように言う方もいますが)
ファシリテーションの最初のステップは『場づくり』です。場づくりのルールとして、小生は以下の様な項目に気を付けています。
・誰も、他の誰かの意見を批判しない。
・職場の上下関係や利害関係は関係なく、対等にモノが言える。
・話を始めたら、必ず耳を傾けてもらえる。ヒソヒソ話をしない。
・言いたいけど言えないそぶりの人をフォローする。
かいつまんで書きますと、場づくりとは『自由に意見を言い合える場』『発言者が守られる場』を作りあげることです。このミーティングは安全なんだ…何を言っても聞いてもらえる…意見を出し切れる・帰るときにはモヤモヤ感は無い…また参加したい!! そんな場を作るようにします。
QUEENは、互いのために曲を作る家族のようなバンドでした。意見は対立することはあるけど、何でも対等に言い合える…フォローしあって成長していく…そんなバンドだったのだと思いました。
カリスマ性の強い方やリーダーシップを備えた人物が持て囃され、そのような人物を育成していこうという風潮も根強くありますが、小生は、互いに相手を信頼しフォローできるパートナーシップが醸成されていく場をつくれるファシリテーターこそが、結果を生み出せる時代になるのではないかと考えています。
白けた組織では、以下の様な本音が聞かれるのではないでしょうか…?
・どうせ声の大きな奴のいう事が通るんだろ。
・変なことを言うと、部長に睨まれるだけだよね。
・どうせトップダウンで既に決まったことだろ、俺たちの意見なんて関係ないよ。
・俺あと3年だし、関係ないね。
このようなあきらめ感が漂う企業や職場に、互いに言いたい事が言える/聞いてもらえる安心感や、互いにフォローし合おうとするパートナーシップがあるのでしょうか?
嗚咽をこらえながら映画館を出て冷え込む広島の街を歩くうちに…OKKで議論している「白け」のことを思い出し色々なことを考えさせられた週末でした。